空腹時の代謝フェーズ — 1時間ごとのタイムライン
断食中、体の中で実際に何が起きているのか。消化・グリコーゲン枯渇・糖新生・ケトーシス・オートファジーを、FastHQが採用する時間目安と、どれだけ個人差があるかの正直な但し書きとともに。
「断食 フェーズ」と検索すると、きれいな図が出てきます。16時間でオートファジー、18時間でケトーシス、12時間で脂肪燃焼 — それぞれ自信ありげな小さなアイコン付きで。けれど実際はもっと曖昧で、その正直なほうが役に立ちます。
体は、きりのいい時間にスイッチを切り替えたりはしません。空腹時の状態は連続したものです。使う燃料がゆるやかに、重なり合いながら移り変わっていく — それは最後の食事・運動・睡眠・体質に左右されます。以下はFastHQが採用しているモデルです。公表された文献の平均値を、目安として示したものであり、測定値ではありません。
タイムラインの全体像
| 時間 | フェーズ | 体内で起きていること |
|---|---|---|
| 0〜4h | 消化 | 食べたものをまだ吸収中。インスリンが高く、直前の食事で動いています。 |
| 4〜12h | 空腹(グリコーゲン) | 食事由来のブドウ糖を使い切り、肝臓に蓄えたグリコーゲンをエネルギーに回します。 |
| 12〜18h | 糖新生 | グリコーゲンが減り、肝臓が糖質以外からブドウ糖を合成。脂肪燃焼が高まります。 |
| 18〜24h | ケトーシス | 体が脂肪を主な燃料に切り替え、ケトン体の産生が増えていきます。 |
| 24h〜 | オートファジー | 細胞の「掃除」のはたらきは長めの断食と関連します。人間でのタイミングは不確かです。 |
これはFastHQのタイマーが表示するのと同じ時間です。以下では、それぞれが実際に何を意味するのか — そしてどこまで信じてよいのかを説明します。
0〜4h — 消化
食事のあとは摂食(食後)状態です。血糖値とインスリンが上がり、体は食べたエネルギーを蓄えたり使ったりするのに忙しい時間。どんなに気の利いたアプリでもここは変えられません。最初の数時間は、代謝の意味で「断食している」わけではなく、食べ物を処理しているだけです。
この長さは食事の内容しだいです。軽い低糖質のおやつは、しっかりした混合食より早く片づきます。4時間はあくまで平均で、約束された数字ではありません。
4〜12h — 空腹(グリコーゲン)
食事が吸収されると、血糖値が下がり、インスリンも下がります。血糖を一定に保つため、体は肝臓に蓄えたブドウ糖 — グリコーゲンを取り崩します。これがふつうの16時間断食の主役となる時間帯です。16時間断食をする人が朝起きて朝食を抜くころには、たいていここにいます。
肝臓のグリコーゲンには限りがあります。多くの人では12時間前後でしっかり減ってきますが、持久系のトレーニング・低糖質の食事・活動量の多い1日では、もっと早く尽きることもあります。これは研究者が、主な燃料がブドウ糖から脂肪へ切り替わる「代謝スイッチ」の一部として説明する境目です(Anton et al., Obesity, 2018)。
12〜18h — 糖新生
グリコーゲンが減ると、肝臓は糖質以外の材料 — 乳酸・グリセロール・アミノ酸からブドウ糖を作り始めます。これが糖新生です。同時に、体は脂肪を燃やす方向へ大きく傾きます。血中の遊離脂肪酸が増え、多くの組織にとって主な燃料になっていきます。
18時間断食やOMAD(1日1食)をする人が、実際に長く過ごすのがこの帯です。まだ深いケトーシスではありませんが、代謝の向きは定まっています。食事由来のブドウ糖から離れ、蓄えた脂肪へ — という向きです。
18〜24h — ケトーシス
脂肪の酸化が進むと、肝臓は脂肪酸をケトン体(β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸)に変えます。これは脳や筋肉が燃料として使えます。ふつうの食事をしている人では、断食による測定可能な栄養性ケトーシスは、たいてい16〜18時間あたりから始まり、すでに低糖質に適応している人ではもっと早く現れます(ケトーシスについて — Cleveland Clinic)。
「18時間ごろ」は集団の平均です。昨夜パスタを大盛りで食べたなら遅くなるかもしれませんし、今朝空腹で運動したなら早まるかもしれません。自分の数値を知るには血中ケトン測定器を使うしかありません。タイマーはモデルです。
24h〜 — オートファジー
オートファジーは細胞のリサイクルの仕組みです。傷んだ部品を分解して、作り直します。断食はこれを活発にします。その仕組みの解明により、大隅良典博士は2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました(NIH/PMC の概説)。
ここが、多くのアプリが省く正直な部分です。オートファジーが「いつ始まるか」について、人間ではきれいな数字が得られていません。 よく引用される値(16時間、18時間)の多くは、動物実験や間接的な指標から外挿したものです。人間で直接測った確かなオートファジーを、特定の何時間と決めるのは難しく、断食が長くなるほど高まることははっきりしています。そのためFastHQは、オートファジーの帯を控えめに約24時間以降に置き、これはモデルですとはっきりお伝えします。正確なオートファジーの時計を示すアプリや記事は — どんなものでも疑ってかかってください。
では、これはどこまで正確なのか
FastHQがフェーズを推定するのに使う入力はただ一つ、断食を開始してからの経過時間だけです。これは意図したものです。血液も呼気も血糖も読み取るふりはしません。その代わり、タイムラインは平均であり、実際の移り変わりは次のような要因で何時間も前後しうる、というのが引き換えです。
- 最後の食事 — 量と糖質の多さが、曲線全体を動かします。
- 運動・活動 — 運動はグリコーゲンを早く使います。
- 食事の履歴 — ケト適応した人ほど、早くケトーシスに入ります。
- 睡眠・ストレス・個人の代謝 — どれも数値をずらします。
本物の測定値が欲しいなら、血中ケトン測定器や持続血糖測定器(CGM)が、実際に起きていることを教えてくれます。フェーズのタイムラインは、タイマーの時間に意味を与えるためにあります。何かを診断するためではありません。
フェーズ表示はモデルであって、血液検査ではありません。目安としてお使いください。確実さが欲しいなら、血糖測定器をどうぞ。
安全についてのひとこと
このページは情報提供を目的としたもので、医療上の助言ではありません。間欠的断食は健康な成人にはおおむね安全と考えられていますが、すべての人に向くわけではありません。断食を始める前に医師に相談してください — とくに妊娠中・授乳中の方、糖尿病の方や血糖の薬を使っている方、低体重の方、摂食障害の経験がある方は必ず(間欠的断食について — Harvard Health)。日本語では、厚生労働省のe-ヘルスネットも参考になります。
出典
- Anton SD, et al. “Flipping the Metabolic Switch.” Obesity, 2018. PMC5783752
- Cleveland Clinic. “Ketosis.” clevelandclinic.org
- National Library of Medicine. オートファジーと断食 — 概説. PMC6471050
- Harvard Health Publishing. “Intermittent fasting: Surprising update.” health.harvard.edu
- 厚生労働省 e-ヘルスネット. e-healthnet.mhlw.go.jp